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会津坂下町は、生徒指導の誤りを認め、両親に謝罪 会見内容  全文

2023年11月17日

 

江川綱弘(えがわつなぐ) 「いじめ裁判」和解についての会見

江川和弥

1、和解の内容の確認

1、事実確認

  2014年当時会津坂下中学校において当時中学1年生、江川綱弘の筆箱がなくなり、トイレの掃除用具入れから発見された。1年の学年主任は、講師である担任を指導し、学年全員(約160人)に、全ての休み時間トイレ以外に教室を出てはいけないという「禁足」を2週間を、課した。

 非常にストレスを感じた生徒は、綱弘に対して、暴言や暴力を不特定多数の生徒から受けることになった。本人は、不安を感じその後学校に通うことができなくなる。

その後、坂下中学校同学年の男子生徒複数に、お祭りの時に神社に連れ込まれて、「なぜ、学校に来ないんだ」「お前はずるい」「お前のせいで俺たちは嫌な思いをしている」等の暴言、暴力も受けた。

 その後、数年にわたり夜叫んだり、人前に出ることを嫌がり、マスクを手放せなくなる。

その後1回目の第3者委員会(会津坂下町教育委員会設置)で、禁足といじめの関係を明らかにしてほしいと本人両親共にのぞむが、学校の対応の遅れ等を指摘するにとどまる。両親本人不服で再調査を求める。

2回目の第三者委員会(会津坂下町設置)でも、禁足といじめの因果関係は明確にされず。本人の自死(2019年1月9日)後に報告書が出されるも、自死といじめの関係についても一切触れず。

 

 

以下の通りの内容での和解

 

和解条項

被告:会津坂下町

原告:江川和弥、悦子

 

1 被告は、原告らに対し、訴外亡江川綱弘への配慮を欠いた状態で本件禁足措置を行ったことは、学校教育上の措置として不相当なものであったと認め、本件禁足措置をとったこと及び同措置によりいじめが誘発され、訴外亡江川綱弘が坂下中学校に通うことができなくなったことを、深く謝罪する。

2 被告は、原告らに対し、今後、会津坂下町における学校教育上、禁足措置を行わないことを約束する。

3 被告は、本件を契機として、学校の役割として、生徒の学力や基本的生活習慣、社会の一員として必要な資質や能力を育成し、本人の進路形成に資することが期待されていること、そのために全ての生徒が学校に楽しく通えるようにすることが求められており、いじめ等が理由で登校又は学習できなくなった生徒がいた場合には、家庭訪問等を通じて本人や保護者が必要としている支援を行い、当該生徒が自然な形で再び登校ができるように配慮することが重要であること等を改めて理解し、いじめ防止対策推進法、いじめの防止等のための基本的な方針(文部科学大臣決定)に則り、なお一層のいじめの防止等の対策に取り組むことを約束する。

4 被告は、本和解が成立したこと及び和解条項について、適宜公表する。

5 原告ら及び被告は、本件が本和解により解決したことを尊重し、互いに名誉、信用を毀損する行為や、相手方を不安、困惑させるような言動をしないものとする。ただし、原告らの町民としての権利行使を妨げるものではない。

6 原告らは、その余の請求を放棄する。

7 原告ら及び被告は、原告ら及び被告との間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する。

8 訴訟費用は、各自の負担とする。

             以 上

 

 

2、なぜ和解に至ったのか?

  *会津坂下が禁足という生徒指導の誤りを認め謝罪をした

    ①安全配慮義務違反

   争点は、「禁足」は生徒指導として合理的な根拠を持ったものなの

   か?被告は本人の安全な状況を確保する責任を果たしていない

   

   ②調査報告義務違反

   学校は、学校生活にかかわる問題が生じた場合、在学関係に基づく付随

   的義務として、信義則上、保護者らに対し、その内容を報告する義務があ

   る(参照:さいたま地判 H20.7.18)。 加えて、当該問題が、いじめ防止対策

   推進法上の重大事態に該当する場 合には、同法 28 条 1 項に基づき、い

   じめの事実関係、背景事情及びそれ らに対する学校・教職員の対応などの

   事実関係について、可能な限り、網 羅的に解明し、報告する義務がある。

 

    ③損害

     精神的苦痛による損害を認めて賠償をする

    

       *今回の原告の判断は、和解の形は取っているが、ほぼ原告の意見

      を認めている。(これまでの主張を大きく転換している)謝罪の

      意思を明確にしている。

     *今後生徒指導のあり方への反省、いじめへの対応への改善の意思

      を示している

  *上記の根拠となる鑑定書の開示をします

    (別紙)喜多朗人(早稲田大学名誉教授)

      大日方 真史(三重大学准教授)

 

    

3、家族としての受け止め

  *子どもいじめの認定の経過に非常に時間がかかりすぎたこと

    家族として、このような長期間、課題解決に時間を要したことにつ

   いては、本当に精神的な苦痛に耐えられないものがあった。

   「いつまで同じことを言っているのか?」

   「本当に、起きた出来事だったのか?」

   「いま、学校で学んでいる子どもに悪影響がある」などさまざまな

   声が家族を押しつぶした。

   

  *第3者委員会の報告書の限界、いじめ問題の専門家の限界が今回明らか

   にされた。

   当事者に寄り添えない第3者委員会の限界について

    今回は2013年に成立した「いじめ防止法」に則り調査報告がなされたはず

   であった。しかし、当事者である、本人や家族の主張や意見は十分に取り入

   れられず。諮問した行政の行為に問題があるかないか?のみを報告書にまと

   め、行政の対応は「問題があるとは言えない」禁足の措置も「生徒指導の範

   囲として認められる」範囲とした。

    この2つの第3者委員会の結論を覆すのに裁判所の判断を必要としたこと

これは、当事者中心の課題解決が現場では全くできていないということを、被告の

会津坂下町自体が認めたことになる。第3者委員会の調査とは何なのか?そこの委員の専門性とは何か?今回、行政は第3者委員会の結論を覆した。今回の和解で、その変更理由の説明を十分果たしたとはいえない。

 原告にだけではなく、広く社会に、どのような経過で、被告会津坂下町は議論を重ね今回の和解の判断に至ったのか?を説明する責任はある。

 

4、今後のいじめ事件への対応の要望

  *課題解決を促進するために

   今回の和解の教訓は、いじめの調査の不十分さを露呈するものであった。子

  ども中心の教育現場のあり方を大事にするには、「いじめは起こり得るもの」

  という前提を持ちながら、丁寧に原因やその要素、背景を探ることが必要であ

  る。

  その際に、教師の経験値で安易に判断することが問題を複雑にするという、今

  回の明確にしておくべきである。

 

  *当事者中心の課題解決になること

   いじめにあった当事者が本来一番救われなければならないのに、誰にもよ

  りそわれなかった事。これは絶対に避けなければならない。一番守られるべき

  はいじめ被害者であって、安易な原因の追求を優先してはいけない。

   また、犯人探しが問題解決にはつながらない。一度壊れた子どもたちの中の

  人間関係をいかに再生させるのか?これは、現場の大人の責任だと考えてい

  る。子どもたちが、自分の幸せのために学び、活動する場としての学校のあり

  方を広く議論する必要がある。

  *いじめ事件経験者、当事者に蓄積された知見をどのように社会の中で活か

   すのか?

      今回のいじめ事件の教訓から私たちは何を学ぶのか?そして、現場で苦

   しむ子どもたちに何ができるのか?教師や行政だけではなく、児童生徒と一

   緒に学んでいくことが必要だと思う。

    いじめは、児童生徒の心の問題だとよく言われる。いじめの善悪がわから

   ないからいじめが起きると思い込んでいる人も多い。今回の鑑定書で喜多朗

  人さんは、子どもの人権や民主主義の問題であると言っている。私も同意見で

  ある。子どもたちには課題がしっかりわかれば解決する能力もある。権利侵害

  も含めて学校ではたくさんのトラブルがおきている。これを話し合いながら解

  決していくには、一番判断の基軸となり尊重するのは、人権でなければならな

  い。そのために、子どもは何をするのか?何をしないのか?教師は、何を応援

   するのか?議論を重ねる必要がある。

 

   今回の和解の教訓はいじめを解決するのは裁判所に訴えることが一番早いと

   いうことではない。学校の生徒指導委員会、第3者委員会、教育委員会、い

   じめ問題調査。そして、何より子どもたちが自分たちで考える事を大人に委

   ねないことがとても大事だと思う

    必ずしも大人が最善の結論を出せる力を持っているわけでもない。行政も

   教師も勇気を持って子どもと、この事件について話ができるときに綱弘の命

   は再生していくのだと親は考えている。

 
 
 

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